趣旨説明(第3期)

超柔軟な立体的業務ネットワーク構造を持つビジネスの経営戦略とオペレーション

1.研究のターゲット

本研究拠点の目標とする研究成果は、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、プラットフォーム、サービス化、知識のグローバル化をビジネスで利用していくための戦略的な概念枠組みを構築し提唱することである。その概念枠組みを用いて、(1) IoT等や人工知能を使って業務システムを稼働・管理すること、(2) サービス化とプラットフォーム化が従来ビジネスを変更していく方向を見出すこと、さらに、(3) この枠組みによって将来のイノベーションの方向性を見出すガイドラインとすることができる。

 

2.研究の背景

2010年ごろに日本ではサービス・サイエンスという概念が注目された。その後に続いた研究で、製造業も含めた、広くビジネスのサービス化が、レストランや旅館や理美容業等の「サービス業」とは全く異なるものであることが明らかになってきた。「おもてなし」は無関係であり、メンテナンスサービスだけでなく、それぞれのビジネスの専門知識を専門サービスとして提供する方式への変換の重要性が理解されてきて、製造業を含めて大きな変化の時代を迎えている。ビジネスの変化は社会の変化につながっていく。

本研究において、そうした新しい形態のビジネスの業務プロセスを、立体的な業務ネットワークとしてとらえる概念枠組みを構築し提唱する。超柔軟な立体的業務ネットワーク構造を持つビジネスとは本研究で使用する名称であり、その意味するところはプラットフォーム型のビジネスのことである。そうしたビジネスによって、IoTやビッグデータ、個人や顧客企業の行動データ、小ロット短リードタイムの可変量生産、マーケティングと生産の同時的統合による製販物流プロセスの変換、O2Oプラットフォーム等々が高度に実現された社会を可能にした戦略とビジネスプロセスとしての実現されているのであり、さらに発展することが予想されるのである。インダストリアル・インターネットやインダストリー4.0も本研究に強く関係している。

 

3.研究のアプローチ

本研究拠点では、超柔軟な立体的業務ネットワーク構造を持つビジネスに関して5つのサブ目標を設定する:つまり、(1) イノベーション戦略、(2) マーケティング戦略、(3) サプライチェーン戦略、(4) オペレーションとサービス化の最適化、(5) オペレーションの設計原理である。

それぞれについて複数の研究者が責任分担を決めつつ、多能工的にかかわることで個々の研究を進め、かつ、定期的に研究経過報告会を行って統合化を図っていく。

これら5つの目標ごとに適した方法を用いる。代表者と分担者の研究方法論とこれまでの成果を、超柔軟な立体的業務ネットワーク構造を持つビジネスという枠組みとして組み合わせることから初めて、全体的に統合していく。経営戦略研究では稼働時間契約の分析やケースとしてのゲーミングを開発する。横浜国立大学で研究開発され国内100以上の教育機関に利用環境を提供しているビジネスゲーム開発運用プラットフォームBSel/YBG上で多くのゲーミング・シミュレーションを使った研究実績を持ち、さらに本研で、言語的定性的ゲームを戦略策定能力育成の方法論として具現化するためのメタゲーム開発と試行を重ねる。マーケティング戦略研究ではひとつのスーパーの顧客識別型行動データを用いる方式の開発を試みる。新ビジネスの企業を含むサプライチェーン戦略のケースを集めて分析するほか、立体的業務ネットワークの数理論理的な特性設計にも使えるようなmax-plus代数による基本方程式を確立してシミュレーションに資する。

組織体制(第3期)

拠点長

佐藤 亮(横浜国立大学国際社会科学研究院教授)

研究員

松井 美樹(放送大学教授 / 横浜国立大学国際社会科学研究院教授)

田名部元成(横浜国立大学国際社会科学研究院教授)

鈴木 香織(横浜国立大学国際社会科学研究院准教授)

鶴見 裕之(横浜国立大学国際社会科学研究院准教授)

本橋 永至(横浜国立大学国際社会科学研究院准教授)

寺本 高 (横浜国立大学国際社会科学研究院准教授)

成島 康史(慶応義塾大学理工学部管理工学科准教授)

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